関西AAA研究会用報告レジュメ 2000.7.19.
報告者 木村 幹(神戸大学)

報告書籍

Birnberg and Resnick,

Colonial Development: An Econometric Study,

New Haven, CT: Yale University Press, 1975


0.Foreword
 本書の成り立ち − YaleのEconomic Growth Centerのシリーズ(25ヶ国の途上国調査)

1. Historical Background
 本書の目的 − アジア・アフリカ・ラテンアメリカ諸国の植民地発展プロセス解明と
→ その為の経済的モデルを使用しての、内的・外的要因分析
→ 各々の内的・外的要因が、個々の社会・経済的相違を越え、今世紀初めから第二次大戦までの間に似たようなパターンを、いかに産み出したかを説明する
そして、ここで、
 内的要因 − 植民地からの移出促進を促す、内的な植民地政府支出
重要なのは、輸出促進のために、政府が何をし、何を行なわなかったか
他方、
 外的要因 − 先進国側の実所得、物価、通商政策
→ これらが如何に植民地の輸出需要に影響を与えたか
言い替えれば、
 ここにおいて、植民地の輸出は、植民地政府の支出と、先進国の需要の特質、及び通商政策によって決められる、とする → そのためのモデル
さて、
 農業分野における宗主国支配
これによる植民地社会の変化 − 世界的分業の一部となる
→ ここにおける不均衡発展
これにより、植民地輸出のあり方を論じるだけでなく、
両者における貿易依存的関係の登場を明らかにする
ここにおける
 開発研究における歴史的分析の必要 − 今日の輸入代替的・産業開発モデル等の、余剰労働力を前提としたモデルの不適当性
→ 植民地研究に相応しいモデルの必要性
そもそも、
 第二次大戦後の経済発展研究のモデルが前提とする初期条件も歴史研究の産物
また、この研究における
 類似した開発プロセス+大きな結果の相違 → 同じモデルによる説明の必要
しかし、今日にいたるまでこのシステム的説明の試みは少ない
さて、19世紀末からの植民地経済の方向転換 − 西洋資本主義の進入
これを分析するのに相応しい信頼できるデータを利用できる国として、
 Ceylon 1897-1938, Chile 1892-1938, Cuba 1903-1937, Egypt 1891-1937, India 1890-1936, Jamaica 1886-1938, Nigeria 1901-1937, Philippines 1902-1938, Taiwan 1904-1936, Thailand 1904-1936
この本は経済統計学的なものだが、読者にはその専門知識は必要ない
1.各国の初期条件の相違
 宗主国の相違 − 仮説・同じ政治的枠組みの持つ意味
2.外的な経済・政治統制がどのようにして共通の開発の目的に用いられたか
 直接的支配と間接的支配(Chile, Cuba, Egypt, Thailand)の意味
→ 後者のグループについては、国際貿易メカニズムの中で、外的影響力がどのように行使されたかをも明らかにする

1-1. Initial Conditions
a.Jamaica
 古くからの植民地、奴隷労働依存、世紀末以後の英国統制強化、輸出振興の為の政府貸し付け
→ 分析時期は、鉄道等の政府支出が増大した時期にあたる
b.India
 東インド会社の間接統治、政府投資不活発、会社廃止後の政府投資急増、政治的目的から経済開発へ
→ 分析時期は、経済開発が優先された時期
c.Ceylon
 先立つ葡・蘭支配、1840-50期の道路整備、作物転換における資本蓄積の意味、英国の紅茶ブーム
→ 分析時期は、コーヒーから紅茶への作物転換期
d.Nigeria
 奴隷貿易反対運動の中での植民地化、時期的な植民地化の遅れ、今世紀初頭の近代的インフラ欠如
→ 分析時期は、英国が直接統治を試み、輸出振興測りはじめた時期
e.Egypt
 19世紀の綿花輸出、早い時期における経済構造変化とインフラ整備、世紀末の英国占領、英国影響下の綿花輸出促進
→ 分析時期は、この英国影響下の時期
f.Thailand
 19世紀後半における緩やかな輸出経済発展、世紀半ばのイギリス経済支配確定、初期における政府の社会資本改善による米生産増加、20世紀に入っての鉄道と米輸出増加
→ 分析時期は、このパターンが明確になった時期
g.Chile
 スペイン支配と19世紀前半の独立、銅生産とその衰退、硝石、1891年の革命
→ 分析時期は新たな議会主義的政府成立以後
h.Cuba
 スペイン支配下の輸出経済発展、米との貿易的紐帯、独立戦争と米西戦争と砂糖産業への打撃、米軍制下の復興政策、米の政治的・経済的支配
i.Philippines
 西政府の無策、世界への解放と米輸入、宗教的統一と現地人エリート、フィリピン革命と米西戦争と被害の少なさ
→ 分析時期は米統治開始以後
j.Taiwan
 清の非積極、日本の開発と反乱
→ 分析時期は反乱が治まり、日本の投資の成果が上がりはじめた時期

1-2. Colonial Control
では、それぞれの植民地で外的な政治・経済統制がどのように行われたか
ここで、
 「植民地」 − 一つの国の貿易・政府セクターが他の国に統制されている
→ これによる植民地貿易の促進
ここにおいて重要なことは、
 多くの植民地において、植民地財政が主として植民地貿易に依存しており、それ故、植民地政府が植民地貿易を促進するように行動するような構造を有していること
− また、この点は、法的な植民地とそうでない地域において大差ない
例1
 India, Ceylon, Jamaica, Nigeria vs Egypt, Thailand − 英影響下
1895 J. Chamberlain 植民地相 − 英国の目的としての植民地発展とその援助
1919 英帝国の保護貿易化
1932 オタワ会議
また、投資家への、輸出活性化補助金
1900 The Colonial Stocks Act
より具体的には、
a.India
 東インド会社廃止後の英の財政削減 − 関税縮小
最大の財政負担としての、
 防衛・治安費、
また、英人官僚人件費、鉄道の非効率、工業開発消極、
→ 結果としての、インドは植民地経済に見合ったものとなる(主として低関税)
「古くからの同じ植民地経済関係」の維持
b.Ceylon
 直接支配、先述
c.Jamaica
 英の植民地政府完全直接統制確立、典型的な植民地モデル、貿易選好、補助金、一次大戦後の帝国保護
d.Nigeria
 1900以後の直接統治、抵抗、南部議会、プランテーション制限、Trade Preference、古典的植民地、貿易黒字と資本赤字、Chamberlain政策の典型(財政援助・当座の必要を越えた輸出開発投資)
e.Egypt
 基本原則としての「他列強支配への反対」、現地政府財政危機を利用しての支配、英仏二重支配、反欧運動と軍事占領、総領事財政支配、決定的財政難、関税制限+保護貿易禁止、一次産品(綿花)輸出国への努力、工業化反対
f.Thailand
 Bowring Treaty、英貿易自由、財政支配、1926以後の若干の自由、タイ政府の慎重且つ保守的政策(制約+列強干渉警戒)、財政均衡優先、外貨準備ロンドンへ、英貿易独占
g.Chile
 米企業支配から英投資へ、米投資の英投資再凌駕、米貿易の圧倒、大恐慌
h.Cuba
 1901/Plat条修正、投資促進策、事実上の植民地
i.Philippines
 公共投資、Trade Preference、関税撤廃
j.Taiwan
 日本を補完する植民地、インフラ支出、教育と高給、税・補助金・規制による輸出促進
まとめると、
 1)自らが臨む方向への、財政・許認可権・規制の使用
 2)生産者の方向づけのための税・補助金
 3)改革普及のための土着組織利用
 4)小規模なしかい重要な政府所有+統制

2. A Model of Colonial Development
 本章の目的 − 植民地的発展における基本循環構造を明らかにする
このポイントしての、
 5つのBehavioral Equations、と7つのDefinitional Equations
ここにおいて
 外的要素 − 先進国から与えられるもの
  実質所得、国内物価、通商政策 → 植民地からの輸出に影響
 内的要素
  輸出価格 − 植民地からの輸出の需要と供給により決まる
  輸出所得 − 輸入のために使われる
  輸入需用 − 実輸出、輸出価格、輸入価格により決まる
  歳入 − 実輸出と名目輸入に対する課税により決まる
  歳出 − これらの構造が維持され、循環が完結するために使われる

2-1 The Trade Sector
 「実輸出(供給)の自然対数」=(輸出価格、輸入価格、過去の政府支出、前年の輸出各々の自然対数、とダミーを変数とする)一次連立関数
輸入価格 − 中間財・資本財・賃金としての影響
政府支出の蓄積 − インフラの整備者としての政府(私的投資の省略)
他方、
 実輸出(需用)=(輸出価格、先進国実所得、先進国物価、前年の需用)の関数
 名目輸入=(実輸出、輸入価格、輸出価格)の関数
ここで忘れてはならないのは、植民地が常に出超であること

2-2 The Government Sector
 「名目歳入の自然対数」=(実輸出、名目輸入各々の自然対数とダミーを変数とする)一次連立関数
 「名目歳出の自然対数」=(名目歳入、前年度歳出の自然対数とダミーを変数とする)一次連立関数
ここで、歳入のメインエンジンとして、輸出が想定されている

2-3 Summary of the Model

3.Government Promotion of Exports
 本章の主題 − 政府支出が如何にして輸出供給の平衡を動かし、輸出を促進したか
a.Cuba
 軍政府の形作った砂糖輸出促進的歳出
具体的には、
社会資本等整備による米資本流入 → 独立政府に受け継がれる
結果としての、
 砂糖依存経済の出現 − 政府部門もその例外ではない(特に関税)
b.Chile
 太平洋戦争による硝石産出地帯獲得 → 政府による硝石鉱山開発政策とこれへの依存
(歳入の2/3を占める) → この財源による一層の硝石鉱山地帯開発(特に道路等)
また、これらの地域に対する、過剰なまでの防衛、スト抑圧
c.Philippines
米の公共事業重視 → 農業生産増加 → 米との経済関係深化 → Hawley-Smoot法による保護 → 財政の関税依存
d.Taiwan
 日本による開発重視政策+治安維持獲得(旧中国的共同体利用) → 交通網、水利、調査、補助金、開拓 → 砂糖輸出増加(効果的) → 植民地財政独立
e.Ceylon
 コーヒーから紅茶へ+天然ゴム → これらへの植民地財政依存・独立 → 財政的独立の限界
f.Nigeria
インフラ整備への集中 → 輸出急増 → 歳入へのフィードバック → 障害としての行政的負担の大きさ
g.Egypt
 Ismail改革 → 水利の重要性 → しかし低効率
 交通網建設の遅滞、輸出への歳入依存、借金負担
h.India
 軍事的需要からの鉄道建設 → 世紀末からの輸出促進のための鉄道建設 → 輸出増 → 歳入増 → にも拘らず財政難(土地歳入にも依存) → 英の開発不熱心
i.Jamaica
 1865反乱以後のインフラ整備 → 輸出増 → 歳入輸出依存 → 1930年代の補助金政策
 しかし、足枷としての財政的脆弱 → インフラ不十分、しかも交通網のみ
j.Thailand
 前世紀のインフラ不足 → 鉄道整備による輸出増 → Bowring Treatyによる制限 → 交通網促進+水利停滞
加えての、安全保障のための過大外貨準備

4. Structural Estimation

4-1 Estimation Method

4-2 Structural Estimation Result

4-3 Summary
 政府支出の輸出振興への量的重要性
しかも、この政府支出は、ほぼ、税収となって同じだけ戻ってきている
→ 長期的な財政的均衡
一般的に、
 植民地の輸出 − 価格変動に対して弾力性を欠く
→ それ故の、輸出価格における長期的な歴史的趨勢は、先進国における実所得・価格・通商政策や、植民地政府の支出による資本投下の積み重ねに対応した非弾力的な価格変動計画の変化に従う
平均してみれば、
 先進国内生産物と途上国からの輸入品の間の互換性は、非弾力的
植民地 − 名目的貿易黒字、
植民地の輸入需用 − 価格に対して非弾力的
その需要は、輸出価格の変化により左右される

5. Degree of Similarity in Colonial Development
 前章の重要な結論 − 同じ数量経済学的モデルの多くの国への適用可能性の証明
→ このモデルの構造における、類似した発展を齎した、共通の内的・外的動因の発見の重要性 → 前章では、植民地ブロックの行動と輸出経済を促進する政府の生産性等に違いがあることを合わせて述べる、
本章においては、
 この相違が重要であるか否かを議論する → 手段としてのクラスター分析

5-1. Covariance Analysis
 この結果としての、植民地発展構造の非同一性
にも拘らず、それぞれが独自のものとも言い切れない

5-2 Cluster Analysis
 ここにおける植民地発展過程の類似の程度を分析する手段の必要
→ クラスター分析
短期的評価
 1)三つのブロック − US Colonies, UK Colonies, JPN Colonies
 2)台湾の特殊性
− 輸出・輸入価格への供給弾力性、輸出価格・輸出量に対する輸入への影響小
 3)US Coloniesの価格変動への敏感 vs UK Coloniesの先進国所得への敏感
長期的評価
 1)二つのブロック − 低生産性ブロックvs高生産性ブロック
Egypt, India, Jamaica, Thailand vs Ceylon, Chile, Cuba, Nigeria, Philippines, Taiwan
→ これを分ける分岐点としての、輸出振興のための政府投資の生産性
特に、低生産グループの共通性は高度
高生産性グループ − 期間が長くなればなるほど共通度高くなる
また、Ceylon, Taiwan vs Chile, Cuba, Philippines, Nigeria
前者 − 高度な長期的均衡、宗主国物価からの自由
では、何故、CeylonとNigeriaは他のUK Coloniesと異なるのか
両国の先進国価格変動と、それへ対応した政府支出の効率性の相違

メモ・市場に敏感なグループと、政府投資に敏感なグループ

5-3 Summary

6.Impact Multipliers, Basic Dynamic Simulations and Historical Accuracy
先の公式における定数の確定とモデルの検証

7.Government Reflection Ratio

7-1 Development Implication
a.実輸出に対する継続的な政府投資効果の減少 − インフレの影響大
b.減少の度合の「低生産性グループ」における顕著
c.実輸入減少効果(若しくは低い増加効果)
d.貿易赤字増加への傾向
→ 先進国援助による貿易赤字強化 → 援助依存経済体制へ
ここにおける政策提言としての、
 名目輸入課税から実輸出課税へのシフト

8.Dynamic Properties of External Forces
本章の目的 − モデルの外的変数の変化が開発に与える影響

8-1 Change in Colony's Import Price
a.低生産性グループ − 輸入価格からの影響小(実輸出へ)
b.輸出価格上昇
ここで、
 実輸出減少+輸出価格上昇 → 低生産性グループの実輸入への影響を小さくする
結果として、
また、輸入価格上昇は均しく、不況を齎す
∵ 需用固定+製品価格上昇 → 実輸出減少
しかも、この影響は年々深刻になる
これを理解するためには、
 鍵となる要素としての、輸出政策に還元されるべき、実政府支出の減少
(外的インフレ → 政府投資効果減少 → 輸出減少)

8-2. Change in Developed Country's Real Income
a.実輸出上昇 → 政府支出増加 → 輸出の更なる増加
ここにおける「不平等発展」
→ 先進国の発展がそれ以上の発展を途上国に齎すことができるか
ここにおいて、
Nigeria − 所得上昇の効果があらゆる面で表れる
Ceylon, Taiwan − 中間A(所得上昇 → 輸出上昇)
US Colonies − 所得上昇の効果最少
Egypt, Thailand − 輸出入双方の価格に敏感
→ 故に短期的には増加するが長期的な効果は大きくない(∵政府投資の効果小)
India, Jamaica − 中間B

8-3. Change in Developed Country's Domestic Prices
US Colonies − 影響最大
→ 背景としての、US経済内部における代替性の大きさ(相互の競争)
Ceylon, Egypt, India, Jamaica, Taiwan − 影響最少

8-4. Summary
 輸入価格上昇 − 短期的マイナス、長期的プラス(?)
この原因としての、
 所得上昇獲得能力の相違
重要なのは、ここにおいて各国を分けることができること
その要因としては、
 1)短期的インパクトの組み合わせ(宗主国の相違)
 2)短期的インパクトに対する長期的調整(政府の「生産性」)
重要なのは、
 外的な要因を如何に植民地関係に組み込むか、と、内的要因を如何に政府の生産性と関連づけるか

9.Dynamic Effects of World War I and the Great Depression
 本章の目的 − 一次対戦と大恐慌が植民地にどのような「得失」を与えたかを分析する

9-1. World War I and Its Aftermath
 US Colonies, Taiwan, Thailand − 輸出増に結びつける
→ 日米の大戦契機による購買力増による
 UK Colonies − 兵員動員・同盟国との貿易断絶・船舶不足による貿易制限
→ 特にイギリスによる貿易のコントロールの重要性 − この原因としての戦時物価高騰 → 輸入物資高騰
また、同時に各国における、
 実政府支出減少 − 本書のモデルではこれは長期的なロスになる
加えて、
 大戦後のハイパーインフレーション → 1922頃の輸出価格の反転
→ にも拘らずその戦前と比べての「高さ」が生産拡大を刺激する
しかし、
 その事実にも拘らず、実政府支出の減少が、これらの要素はかえってこれらの国にマイナスとなる

9-2. The Great Depression
 US Colonies and Ceylon − 実輸出ロス(大恐慌の中心US)
→ 輸入減+輸出価格減
 UK Bloc − 実輸出に大きな変化なし
→ 1930年代半ばには回復
 Taiwan − 実輸出増加

9-3. Summary
 
10.Trade Restriction and Tax Change
 US Trade Restrictions − 逆に各地域の輸出を激減させる
→ その影響は「法的支配」の引かれた土地のほうが緩和される
 Ceylonにおける国際ゴム貿易制限 − 実輸出現象を輸出価格上昇が補う

11. Conclusion
 本書の最大の貢献 − 政府支出の明らかな役割の存在

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