特別講座「韓国・朝鮮学セミナー」用レジュメ(2002年2月20日分)

2002年の日韓関係
− ワールドカップと経済協力を巡って −

神戸大学大学院国際協力研究科 助教授
木村 幹

はじめに
1. 2001年の日韓関係
 a.経済的限界への直面
 b.「安定した15年間」の功罪
2.ワールドカップという「イベント」
 a.日韓和解の為の祭典?
 b.「イベント」を巡る思惑の「ズレ」
 c.現実との直面の持つ意義
3.経済協力を巡る試行錯誤
 a.「世界化」の中の日韓関係
 b.経済協力を巡る思惑の「ズレ」
 c.「現実」としての「自由貿易協定」
4.転換期の日韓両国
 a.経済的転換期の両国
 b.政治的転換期の両国
 c.薄れゆく関心とエリートのパイプ
むすびにかえて −  「友好国の一つ」としての日韓関係


2月20日分講義ノート

はじめに
 前回のお話のまとめ − 「内なる日本との葛藤/日本への束縛」に大きく規定された解放以後の韓国
→ その経済発展(前回話せず)も、また、権威主義体制化も、それに大きく由来している
このような状況を打破するものとしての、
 80年代 − 朝鮮戦争後世代に主導されて台頭した解放後世代の時代
CF.
金大中 − 1925年12月3日
金泳三 − 1927年12月20日
盧泰愚 − 1932年12月4日
全斗煥 − 1931年1月18日
金鍾泌 − 1926 年1月7日
朴正煕 − 1917年生まれ
李承晩 − 1876年生まれ
→ 日本という名の「過去」からの脱却 → 「過去」を「(確定した、そして単純化した)過去」として捉えるが故に、相手にその認識を問い、また、自らもその「過去」を確定しようとする
が、この状況も、
今日では、15〜20年を経て、固定化され、更にはその熱意も失われつつある
CF.2001年版教科書問題
1. ワールドカップと日韓関係
 W杯とは何か?
1) サッカーの国際大会 → 自国チームの戦績への関心
2) 国際社会に自国/自民族を知らしめる場 → イベント・会場・運営等への関心
3) 「日韓」の為の特殊な場
さて、
ここにおいて我々が見落としてはならないのは、この3点における日韓両国の「温度差」
W杯からのイメージ(1996年)
 日本 − 試合が見れる 33% 会場建設に負担がかかる 15%
 韓国 − 国際的地位が上がる 43% 経済効果が期待できる 35%
即ち、日本では1)、韓国では2)が突出していることを知ることができる
勿論、
 その背景には、近年における両国代表の戦績の差はあり → 資料
しかし、それは日本サッカーが躍進を始める以前から同様であったことが重要
また、3)についても、日韓では温度差あり
 日本 − 安易な「日韓友好」 「交流が友好を呼ぶ」
 韓国 − 鄭夢周「単に共同開催されるだけでは、両国関係が好転する保障はどこにもない」
これはある意味では当然、
 ∵ 自国のアピールが重要な韓国にとっては、「日韓を台頭に扱うこと」よりも、まず、「自国が最初に来ること」が重要
背景
 国際社会における韓国の位置(or日本の特殊な位置) → 「Go To Japan」
その代表的な表れとしての、
EX.釜山の抽選会、Korea-Japanの名称の順序への拘泥

このような両国、更には両国内部における微妙な思惑のズレは、経済問題にも
2. 日韓自由貿易協定問題
これに対しても、考え方の相違は存在
1) 日韓をアジア、更には、世界に開く為の第一歩としての日韓「自由貿易」協定
2) 世界資本主義、アメリカ中心主義に対する防壁としての「日韓(中)」自由貿易協定
3) 単純に経済効果の観点からの視点
CF.「効果はあるのか?」 → 不明
∵ 必ずしも相補的ではない日韓関係
− 妥結はその分だけ容易かもしれないが、効果も限定される
CF.韓国−台湾関係 → 余りにも似ているので経済関係が希少
CF.NAFTA − アメリカの資本と、メキシコの低賃金が組み合わさっているから有意味
→ 明らかなのは、業種ごとの影響のみ(関税撤廃による)
また、2)の考え方の問題
 対米経済同盟としての、日韓 − そのスケールの面では勿論、その相補える部分においても到底、対抗関係になり得ない
→ そもそも、日韓共に現在の状況では、アメリカとの友好関係や、外国からの投資なしにその経済は成り立ち得ない − そして、それは中国も同様
また、
1) であれば問題になるのは、何故、経済効果も明確ではない韓国となのか?
(一つの回答としては、余り影響がないから
→ それは無意味であるということに他ならない)
さて、以上で明らかになるのは、
 結局、日韓という狭い範囲で物事を考えても何も解決しない、ということ
→ 「グローバライゼーション」の中の日韓関係
ここで重要になるのは、
 そもそもの両国における双方の「重み」の低下
例・貿易における
 韓国 − 2001年に輸出相手国NO.2に中国
 日本 − 2001年に輸出相手国NO.2に中国、以前から輸入相手国NO.2は中国
→ 特に韓国はこの傾向に顕著に反応しつつある

世界を見なければならない、ということは、実はW杯においても重要
そもそもW杯による「国」のアピール − どのくらいの意味があるか?
ここで忘れてはならないのは、
 この大会が「単一ゲームの大会」である、ということ
→ 開催国自身にとってはともかく、「世界」の人間にとっては、「優勝国/最優秀選手」は記憶に残っても、開催国がどこであったか、は記憶に残らない
→ 開催国にとっての効果は極めて限定的(まして共催)
「対立する日韓が共催した」ことの付随的効果などなきに等しい
→ そもそも「世界」はそんなことに関心などない
寧ろ、
 重要なことは、同じイベントを巡って日韓両国が全く異なる意図を持っていることを、正面から見極めること
CF.Korea-Japan名称問題 − 「どう決まっていたか」よりも重要なのは、何故に韓国サイドが決勝戦を譲ってまで、開幕戦と「名称」を確保したか
CF.「友好のアピール」 − 「宣伝効果」を挙げる為に用いられることと、それにより、対立関係がなくなる、ことは全く意味しない

この意味において、我々が見落としてはならないのは、
 これら二つの問題について、韓国側は日本側より遥かに「現実的」である、ということ
CF.「共催」への戦略転換

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