韓国ナショナリズムの形成過程と小国主義

はじめに − 韓国ナショナリズムへの素朴な考察

a.「民族とはなにか」という問いなきナショナリズム
→ 「一国家一民族」というフィクションが実現可能な朝鮮半島(例外的な同質性)
・ 何故そのような特異な状況が出現し得たのか
・ それならばナショナリズムの形成過程で何が問題となったのか?
  それともスムーズな発展が成し遂げられたのか?

b.「強烈な」ナショナリズム − 「強烈」とは何を意味するか
→ 倫理的価値判断を含み、繰り返し唱えられるナショナリズムの主張
・ その源泉はどこにあり、その主張はどこに由来するのか?

c.近代化とナショナリズム
・ 戦後の韓国の急速な「近代化」とナショナリズムはどのような関係があるのか?
・ それは朝鮮王朝末期の植民地化への過程で見られたものとはどう違うのか?

第1章 韓国ナショナリズムの前提条件

A.前近代東アジア国際体制の中での「朝鮮」

a. 朝貢体制の成立
 中華帝国のディレンマ − 法治の論理と徳治の論理(秦帝国から漢帝国へ)

b. 海禁体制の意味
 弱体な帝国(明) → 帝国の領域自己限定 → 朝貢国の「巡礼圏からの分離」

B.近代化の前提としての国内体制

a. 王朝統治体制の弛緩
 共同体の崩壊 − 権威(在地両班)と富(常民地主)の分離
→ 王朝の在地社会掌握能力の減退 − 戸口と土地の「減少」

b. 三重の破壊(日帝支配から李承晩時代へ)
 対日協力/朝鮮戦争/農地改革 − 日帝時代に新たに形成された地主層も脱落
→ ソフトステートとしての韓国

第2章 韓国ナショナリズムの展開過程(ケーススタディ1)
− 小国意識からの出発とその確認

a. 小国意識からの出発
 朴珪寿の開国論 − 小国であるが故の開国(公平の大国への期待)
 今の世界の情勢は、東西の列強が対峙し、さながら春秋時代のように、互いに盟約を結び、絶えず戦争を繰り広げている。我が国は小国ではあるが、東洋の地理的重要地点に位置しており、晋と楚の間に位置した鄭と同じ立場にある。内政と外交に機を失わなければ、独立を保つことはさして困難ではない。逆にそうしなければ、亡国の憂き目を見ることになるだろう。今日、アメリカは地球上で最も公平な国であると言う。その政治は巧みに問題を解決し、しかも世界の最富裕国であり、むやみやたらに他国を侵略しようという欲はない。仮令、アメリカが自ら我々と盟約を結ぶことを提案してこないとしても、我が国が率先してこれと固く盟約を結び、孤立を回避することがどうしていけないのだろうかこれこそ、目指すべき我が国の道である。

b. 小国意識の確認
 金允植(対清派遣使節団長) − 開化への着手とコスト故の挫折
→ 朝鮮が小国であることの確認 → 「XX派」への転落


 節約に務め、互いに貪りあうことなく、民を助けることに専念する。条約を守り、友邦との間に無用な問題が起こらないようにする。これこそが我が国の道である。若し、我が国が中国の道を模倣しようとし、軍隊やそれを支える為の機械の設置に力を注ぐなら、民は窮し国の財政は底を尽き、結果、体制は一挙に崩壊してしまうであろう。若し中国が西洋の真似をするなら、名分が乱れ、紀綱が解体し、易姓革命が起こってしまうであろう。若し逆に、西洋が東洋の規範に倣おうとするなら、政治は上に立つものの自由にするところとなり、結果、国勢は衰弱し、必ず近隣の大国の併合するところとなるであろう。これに由りてこれを見るに、善法というものがあっても、それが地球上のどこにでも通用するというものではないことは明らかである。今、国勢を顧みず西洋の為すところばかりを追い求めることは、自らの領土の大小を図ることなく、曹繰と天下を競うようなものである。時勢に応じて、自らの力を良く斟酌して政策を行うなら、今の朝鮮の政策の根本は、財を傷つけず、民を害さないことである。その根本の政策さえしっかりしておくなら、枝葉というものは放っておいても茂るものである。今、時務といわれるものは、全て西洋に範を取った枝葉末節に過ぎないものである。その根本を固めずして、他人の末ばかり学ぼうとする。それを事の本質を知っていると言えるのであろうか。


第3章 韓国ナショナリズムの展開過程(ケーススタディ2)
− 近代化とナショナリズム整合化への模索と親日派への転落

a. 沈黙    − 金允植(挫折の中での沈黙)

 我国ノ有様ハ丁度重病人ト同様ニシテ此ノ病根ヲ治セント欲セバ充分主治医ニ重キヲ置キ充分ノ信用ヲ為サザルニアラザレバ到底回復ノ期ナカルベシ実ニ我政府ハ一意改革案ヲ決行シタクハ思ヘトモ如何セン財力ノ窮乏ニ制肘セラレ各般ノ事兎角阻喪セサルヲ得ズ随分是迄ノ議案中ニモ民生ニ有益ナル事柄ナキニアラザレトモ如何セン目下三南ハ東学徒ノ擾乱ニ西道ハ日清交戦ニ通路ヲ妨ゲラレ普ク民心ニ訴フルノ機会ヲ得ス又我政府カ鞏固ナラザル為メ屡々外部ノ刺衝ニ遇ヒ内部ニ風波ヲ起シ逡巡セシムル如キ傾アルハ嘆息ノ至リナリ


b. 積極的協力 − 李完用(「先手論」の採用と朝貢体制への「復帰」)

 此次日本ノ要求ハ実ニ大勢ノ然ラシムル所ナリ[中略]且ツ日韓已ニ其強弱ヲ異ニシ我ニ之レヲ拒絶スルノ力ナキニ於テハ其未タ感情ノ衝突セサル未タ時期ノ切迫セサル今日ニ於テ圓滿ニ妥協ヲ遂ケ日本ノ要求ヲ容ルルト同時ニ我方ノ要求ヲモ容レシメ彼我合意ノ上締結ヲ為スニ如カスト  國家としての獨立の實力なくして獨立を望むも不可能なり。故に飽く迄日本と提携せざるべからざる事は申す迄も無きことなり。今日本と提携せざるべからざる理由として特に列擧すれば、地理上日本と提携することの最も利益なること其一なり。韓國は久しく支那の属國たり。而も支那より何等の利益を受くるなし。日本は飽く迄韓國を開發せんとする方針一貫せり。是れ日本と提携するの利益たることの二なり。


c. 国内改革  − 李光洙・朱耀翰
(国内改革から対日協力へ − 「改革」と「伝統」のディレンマ)

 刀剣を帯びて出よ、とおっしゃられますが、どなたか本当に自分で行く気のある方がおられるのでしょうか。我々は自らは安全な場所にいながら、本国や西・北間島の同胞達に、「出よ死す迄戦え」と言っているのではありませんか。本当に刀や剣を取り、死ぬ迄戦う気持ちを持っているなら、我々は、どうして国が亡んでから一〇年も経つのにおめおめ生き長らえているのでしょうか。本当に出戦する意志がおありなら、総理、総長、皆さんが刀と剣を持って前線に立ちなさい。そうしたら我々も後に続きましょう。

 だから我々が日本に協力する態度を見せたとしても、どんな損害があるというだろうか。私にはどのような損害もないように思われる。我々が協力する態度を見せようと見せまいと、徴用という手段であるにせよ、徴兵という手段であるにせよ、日本は我々から欲しいものを奪っていくに違いない。三千万の民族が総決起し、大規模な反抗を行ったとしても、そして、数万の人の血が流れたとしても、徴用や徴兵を逃れられるかは分からない。そもそも、当時、そのようなことが可能であったとでも言うのだろうか。


背景・疑似「帝国」としての大日本帝国 − 普遍原理としての「日本人」

第4章 韓国ナショナリズムの展開過程(ケーススタディ3)
− 小国意識とナショナリズムの整合化の成功

a. 李承晩に見る「反抗的対外依存」の論理(アメリカに嫌われる親米主義者)
→ 「懇願」から「当然の権利」へ − 小国意識の逆用論理
→ 「不屈の民族主義者」

 安昌浩や李承晩と同様な愛国愛族の士であったが、朴容晩は日本に対する暴力革命なしに韓国独立は成し遂げられないと堅く信じていた。しかし、彼[李承晩]自身の信念にしてみれば、こんな革命は成功しないのであり、韓国人は何よりも西方列強の外交上の支持と米国人の同情を得んが為にたたかわねばならなかった。  韓国民は国を自律できないからこそ、アメリカに仲裁権を依頼したのであって、アメリカが韓国のためにどういうことをしようとそれは無駄なことだという論法には何等の根拠もないのだ。もし韓国が自らを完全に防禦できるならば、かれらはアメリカなり或はその他の国家に一体何のために援助を請うたであろうか。友好的な援助を最も必要とする場合は、我々人間にとってどういう場合だろうか。自分が敵よりもっと強い場合に必要とするとでも言うのか。


b. 比較のナショナリズム(反日の意味) − ネーションのプライドの代用

c. 国際環境の意味

むすびにかえて − 「小国型」ナショナリズムの意味

A.現代韓国における意味

a. 開かれた政治・経済体制

b. ソフトステートのディレンマの回避

c. NIEs後の限界 − 国際環境の変化と、自らの価値の客観化の欠如

B.ナショナリズム理論研究への貢献の模索

a. ナショナリズムにおける「民族的プライド」の問題
− 特に「小国」における「ナショナリズム」と「従属」のディレンマ

b. 近代化とナショナリズム − 古典的対立の重要性確認

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