2000. 12.18. 汎太平洋フォーラム用レジュメ

アジア通貨危機以降の韓国
− 外資とナショナリズム −

神戸大学大学院国際協力研究科 助教授
木村 幹

予備知識 - 韓国の「微妙な大きさ」、人口・面積・経済規模

はじめに − 2000年の驚き
ある研究者の印象 − 「民族主義」の国、韓国
→ 2000年夏・現地調査での裏切られた期待 − 「外資による繁栄」と「外資への期待」
→ 韓国はどこに行こうとしているのか、ナショナリズムは失われたのか

1.「漢江の奇跡」の基本構造 − 「韓国型」政治経済システム
経済発展への「政治」の関わり - 「放任」か「介入」か(どの「介入」か)
「NIEsへの跳躍」を支えたもの - 輸出指向型工業化戦略、と特殊な金融構造
巨大財閥の誕生と「戦略」会議 - 寡占体制のメリットと重化学工業化への「スケールのメリット」
→ 成果としての「巨大化した」韓国 - 1989年・史上初の「中国よりも大きな韓国」の出現

2.通貨危機とは何であったか
韓国版「設備投資バブル」 − 「右肩上がり」への過度の信頼
労働運動活発化と労働者賃金上昇 − 学歴格差から「規模」による格差へ
半導体価格急落と円安進行 − 財閥の経営状態悪化
97年アジア通貨危機と韓国 − 韓宝事件と香港株価急落の衝撃
→ 「強すぎる」労働組合、「包括的すぎる」財閥、「楽観的すぎる」成長予測

3. 通貨危機はどう克服されたか
「論理的」可能性と「孤立感」 − 国際的孤立か、屈辱的協調か(「我々は友人を失った」)
IMFの介入と「再協定論」 − ナショナリズムの発露としての「IMF信託統治論」
IMFの強硬姿勢とゼネスト断念 − 「小国」的ナショナリズムによる「全体利益」優先と「特殊利益」抑圧 
 CF.韓国の経済発展と、国際社会への「屈辱的」協調 − 日韓条約、ベトナム派兵
    90年代の「持てる」世代の出現 − 1996年・学生運動の孤立化
「反外資」から「反財閥」へ − 財閥戦犯論の浮上
金融改革と「財閥処理」 − 政府の新たな介入の「手」
→ 「非効率的な産業部門切り捨て」と、政府の干渉と、ナショナリズムの

むすびにかえて − 「景気回復」と「労働争議」と「財閥危機」の同時進行
「巨大な香港」? − 「韓国型」政治経済構造の終焉と、「敗戦処理型」介入構造の出現
「財閥の時代」の終焉 − 巨大な専門的企業
「協調的」「小国」ナショナリズムの帰結 - 「開放型」経済体制とナショナリズム


韓国調査メモ

8月3日

★ソウル大学経済学部 安秉直先生
 韓国経済について − 改善の方向に向かっているが、今後は「市場がよく機能するインフラ」を作る必要がある。その場合に重要なのは、「社会の近代化」である。

★全国経済人連合会 李炳旭氏
 Big Deal(財閥改革)に当たっては、財閥と政府の間に事前に極めて密接な交渉が行われた。この動きには財閥も自主的に参与しており、一方的に上から押し付けられたものではない。強すぎる労働組合の存在は大きな問題だ。

8月4日

★韓国テンプルトン投信運用常任顧問 姜敝煕氏
 この数年の外資導入は国民から全面的支持を受けている。また、同じく外資導入による資金調達構造の急速な転換(株式中心への変容)は、韓国経済の構造を大きく変えつつある。外国人投資は既に韓国の流動株式の過半を占め、そこには「バイ・コリア」から「バイ・IT」、それも三星電子・現代電子・SKテレコムへの集中的投資への変化が見られる。

★浦項製鉄経営研究所
 浦項製鉄の民営化は着実に進行している。今後の課題は、M&Aに如何に対処し、これまでの鉄鋼を熟知した専門的経営者の自立的経営を如何にして守るかが、大きな課題であり、新日鉄との提携もその意味もある。民営化における政府の方針に対して、浦項製鉄側が発言を挟むことは難しい。

★高麗大学アジア問題研究所 崔章集先生
 金大中政権の改革は国民の支持を得ており、これに反対しようとする労働組合等の動きは国民から大きな支持を獲得していない。また、これに対応するために、福祉部門の拡大も行っている。とはいえ、現在の韓国は本格的な福祉国家化ができる段階には達しておらず、これは将来の課題である。

その他を含む、全般的なまとめ
 外資導入に対しては、M&Aを恐れる浦項製鉄のそれを除き、否定的な見解はほとんど見られない。政府の改革の方向性は全般的に支持を獲得しつつあり、これに反対する労働組合等の運動への支持の拡大も見られない。
改革に当たっての政府の関与の仕方は、何よりも、財閥等の経営が窮地に陥った場合の処理過程において顕著であり、この過程を通じて、産業構造転換を実現しつつあるかのように見える。

註・このメモは、インタビューの内容を木村が要約したものです。インタビューの正確な内容については、Kan_Kimura@yahoo.comにご確認ください。


「敗戦処理型」介入

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